バトンタッチの座談会



功一「久しぶりの出番になるね〜」

恵理「そうですね、功一さん。『在りし日の思い出』の最新話が『ルーラーの館』にアップされたのが、ええと……」

友美「2010年の8月27日ですよ〜、恵理ちゃん〜。つまり、三年以上も放置されてたわけですね〜。まったく〜」

恵理「本当、休止期間が長かったよね……」

功一「ああ、恵理ちゃんがとても遠い目を……。でもこうして『座談会』の場に呼ばれたってことは、いよいよ『在りし日の思い出』も再開するんだよね。いや〜、本当に長かった〜。ね、美花ちゃんたちもそう思うよね?」

美花「えっ!? あ、う〜ん……。そ、そうね……」

功一「どうしたの? そんな歯切れの悪い返事して。なんか、目も泳いでるし……」

フィアリス「いや、それがじゃな……」

黒江「きみたち三人には、非常に言いにくいのだが……」

功一「どうしたんですか? フィアリスや黒江さんまで引きつった笑みなんか浮かべちゃって」

恵理「ともあれ、これで全員揃いましたね。さっそく再開を記念して宴会を始めましょうか!」

功一「そうだね」

美花「…………」

フィアリス「…………」

黒江「…………」

功一「あれ? なんで黙り込んでるの? 三人とも」

美花「それが――」

深空「悪い! 遅くなった!」

功一「あっ、深空ちゃん! そうか、第一演劇部の三人がまだ来てなかったね。ごめん、彼女たちのことを忘れて、全員揃ったなんて気になっちゃって」

美花「いや、そういうことでもなくて――」

詩織「あれ? リメイクメンバーの皆さんはまだ来ていらっしゃらないんですか?」

恵理「リメイクメンバー? なんのこと?」

詩織「なんのことって、『在りし日の思い出』がリメイクされるにあたって、新たに追加された人たちのことですよ」

友美「えっと〜……、片山荘に新しい住人が増えるんですか〜?」

美花「え、笑顔が怖い……」

黒江「まあ、友美くんの言い方でも、間違いではないな」

功一「なんですか、その『正解でもない』みたいな口調。なんか、すごく嫌な予感がするんですけど……」

恵理「功一さんもですか? き、奇遇ですね。私もです……」

フィアリス「隠しておくことなどできぬのだから、はっきり言ってしまおう。――お主たち、解雇されたぞ」

功一「解雇……?」

フィアリス「うむ。作者が言うには、じゃ。お主たちはテンションが低くて書きづらいらしい」

功一「落ちついてるって言ってほしかった……」

恵理「功一さん、そういう問題では……」

功一「あっ、でも待って! テンションの高さは最新話で登場した『山本隆士』って人が補ってくれるんじゃない!? そういうテコ入れなんだと僕は思ってたんだけど!」

フィアリス「それでもお主たち、隆士にテンションの高い返しができないじゃろ? 黙って見ているだけじゃっただろ?」

功一「うっ、それを言われると……」

友美「あの〜、ということは、片山荘の住人は総入れ替えになっちゃうんですか〜?」

美花「それが、非常に言いづらいのだけど――」

???「おっ、いたいた! お〜い、美花っち〜!」

功一「なんか、すごい大男が笑顔でこっちにやって来る! 恵理ちゃん、逃げて!」

美花「えっと、逃げることはないと思うな……。彼は佐野 力也(さの りきや)くんっていって――」

友美「リメイクメンバーとやらのひとり、ですか〜。ときに美花さん〜? あなたとはお知り合いのようですけど〜?」

美花「ううっ、それはぁ……」

フィアリス「わしと黒江、そして美花は続投キャラじゃからな。当然、リメイクメンバーとも面識はある」

友美「やっぱりですかぁ〜」(ゴゴゴゴゴ……!)

美花「やっぱり怒った!!」

黒江「まあ、怒るだろうな」

フィアリス「功一と恵理は、呆けるに留まっておるがな」

力也「悪りぃ、遅れちまった! いや〜、あすかの奴が寝坊しやがってよ〜」

あすか「寝坊したのはお前のほうだろ、ぼけぇっ!」

力也「痛でぇっ!?」

功一「いきなり蹴り飛ばしたっ!?」

友美「小柄なのに、アグレッシブな娘ですね〜……」

恵理「ぼ、暴力はいけませんよっ」

美花「それ、片山荘に初めて来たときに理緒(りお)くんも言ってたわ〜」

功一「……理緒くんって?」

美花「えっと、あなたとチェンジすることになった男の子っていうのかな……。彩桜学園高等部の三年生」

功一「そんなにテンションが高い人なの?」

深空「いや、それほどは。でも佐野との相性が抜群でさ……」

フィアリス「ずばり言おう! 功一、お前に足りなかったのは『気は優しくて力持ち』な友人じゃ!」

功一「僕個人には落ち度ないんだ……」

理緒「まあまあ、そんな落ち込まないで。……って僕が言うのもおかしいけど」

功一「しかも、一人称は僕と同じなんだ……」

力也「確かにお前とキャラ被ってるな、理緒。別にこいつも続投でよかったんじゃ……いやダメだ! オレの部屋の隣に住むのは理緒でなけりゃあ!」

恵理「あの、どうしてそこまで理緒さんにこだわるんですか? 設定からして変えるなら、力也さんが功一さんの友人になればよかったのでは?」

力也「それじゃダメなんだ。いいか、オレと理緒、あすかと梢(こずえ)の四人は、元々『ワールドブレイカーシリーズ』の外伝、『ユメの箱庭』って作品の登場人物でな?」

恵理「梢さん、ですか? どちらにいらっしゃるんでしょう?」

力也「ん? あれ、いねえ?」

あすか「おい、梢! 大丈夫だ、こいつらは大人しいから! 来る前に言われたように、旧・大家に包丁で刺されたりとかいう展開にはならなさそうだから!」

梢「ほ、本当に……?」

あすか「……たぶん」

理緒「なんで、そこで『絶対』って言えないのさ、あすかは! 梢ちゃん、本当に大丈夫だから。ここに来る前、確かに力也がそんなこと言ってたけど、本当に大丈夫そうだから」

梢「は、はい。それでは……」

功一「この娘もこの娘で、恵理ちゃんとそれほど変わらなくない?」

恵理「はい。私がストレートロングなのに対して、この娘はおかっぱ頭というくらいの違いならありますけど……」

力也「さっき言いかけたろ? オレたちは元々『ユメの箱庭』っていう『ワールドブレイカーシリーズ』の一作品に登場する予定のキャラだったんだ。けど『在りし日の思い出』をリメイクするからって、急遽(きゅうきょ)、こっちに呼ばれてよ」

理緒「これでも全員が来たわけじゃないんだよ? 厳選して、この四人になったんだ」

あすか「あたしのことは力也とセットで扱いたいらしくてな。まったく、あたしにはいい迷惑だ」

力也「うっせえ。そんなん、オレだって同じだっての」

功一「あの、それが主役の交代にどう繋がるの?」

理緒「寝取られた感じ、しない?」

功一「は……?」

理緒「僕ときみだけ、あるいは梢ちゃんと恵理さんだけ交代じゃ、寝取られた感じがしない?」

功一「いや、僕たちの性格が似てるなら、僕と恵理ちゃんに、力也さんとあすかさんをプラスするだけでいいと思うんだけど……」

力也「それじゃあオレがてめえに理緒を取られた感じになるじゃねえかよ!!」

功一「ひいっ!?」

理緒「あ、あとさ。そんなふうにビビってるようじゃ、力也の親友ポジはできないと思うよ? そこも変更の理由なのかも」

力也「そう! 理緒は初対面のときこそビビってたが、本編開始の段階では微塵もオレのことを怖がらなくなってるからな!」

理緒「本編開始の段階っていうか、半日くらいで打ち解けたよね。炊事場で駄弁(だべ)って。……それはそれとして力也、むやみやたらに大声出さないの。功一さんとか恵理さんとか、怖がっちゃってるでしょ? てめえ呼ばわりもダメ。力也はそれで誤解されること、本当に多いんだから」

力也「へいへい。……ったく、お前はオレのお母さんかっての」

理緒「片山荘では、生活態度にまで口を出してるんだから、似たようなものじゃない?」

力也「……まあな」

理緒「今日だって、遅刻するよって何度声をかけたことか……」

力也「それを言われると弱ぇな……」

あすか「最終的に起こしてやったのは、あたしだがな」

力也「踵落としで、だけどな。あれは久々に効いたぜ……」

あすか「お前が起きないのが悪い!」

友美「あの〜、リメイクメンバーの方々だけで盛り上がってるところ申し訳ないのですが〜」

力也「おう、悪りぃ……って、なんだその怒りのオーラっ!?」

友美「私まで解雇されたのは、なぜなのでしょうか〜?」

あすか「待て待て落ちつけ! まずはその怒りを鎮めるんだ!」

力也「つか、オレに訊かれても困るんだっつの!!」

理緒「フィアリス! 説明お願い! 早く!!」

フィアリス「うむ。よいか、友美よ。端的に言って、その『のんびりトーン』がリメイクメンバーと合わん」

梢「あすかはハキハキしてるもんね……」

あすか「えっへん!」

力也「いや、褒められたのかは微妙なところじゃね?」

理緒「それ以前に、『えっへん』とか自分で言うのやめようよ、あすか。そんなんだから子供っぽいって言われるんだよ?」

あすか「うっさい、ぼけっ!!」

理緒「痛い! 痛いよ!」

力也「なあ、梢っち。あすかって、なんでオレには『ばきどかぐしゃあっ!』って感じなのに、理緒には『ぽかぽかっ!』なんだ?」

梢「それは、わたしに訊かれても……」

あすか「あたしだって程度はわきまえている、ということだ!」

美花「要するに、あすかちゃんは力也くんに甘えてる、と?」

あすか「なにぃ!? んなわけあるかっ!」

美花「だって、そうでしょ? 力也くんが言うところの『ばきどかぐしゃあっ!』は、それをやっても力也くんは自分を嫌わないでいてくれるってわかっているからやってるだけ。同じことを力也くん以外の人にやったら、本気で嫌われちゃうかもしれないもんね」

あすか「むむむむむぅ〜っ……!」

理緒「つまり、あんまり甘い顔で受け流していたら、あすかからの信頼を必要以上に得てしまって、いずれは『ばきどかぐしゃあっ!』をやられるかもしれない、と。……うわあ、気をつけよう」

あすか「誰がやるか!」

力也「オレにはやってんじゃんか!」

友美「あの〜……」

功一「なんか、さ……」

恵理「かすんじゃってますよね、私たち……」

黒江「だから書きづらいと言われたのだろうさ」

功一「なんか、否定できなくなってきた……」

恵理「いけません、功一さん。ここは私たちも面白トークを繰り広げないと……!」

友美「恵理ちゃんがいつになくやる気です〜。私も協力しますですよ〜」

フィアリス「よし、三人とも。いまここで理緒たちのように軽快なトークをやってみるがよい。あるいは、解雇も取り消されるかもしれん」

功一「わかったよ、フィアリス。――頑張ろう、恵理ちゃん、友美ちゃん」

恵理「はいっ!」

友美「リメイクメンバーの鼻を明かしてやりましょう〜」

美花「じゃあ、スタート!」

功一「……こほん。えっと、まずはボケから入ったほうがいいよね」

恵理「そうですね。じゃあ……」

友美「私がボケましょうか〜?」

功一「いや、友美ちゃんはツッコミ属性でしょ。僕がボケるよ」

恵理「頑張ってください、功一さん」

功一「ありがとう、恵理ちゃん。……ええと、隣の家に囲いができた。かっこい〜」

友美「……功一さん〜? あなたはギャグというものを甘くみてはいませんか〜?」

功一「そ、そんなことはないよ。これでも真面目にやってるんだ。それよりもほら、早く突っ込んで」

友美「なににですか〜。『へぇ〜』とでも言えば満足なのですか〜?」

功一「あう〜……」

フィアリス「……ダメじゃな。作者の手が思いっきり止まっておる」

功一「また、随分とメタなことを言うね……」

理緒「あのさ、功一さん。うちの力也を使う? 貸してあげるからさ」

力也「理緒!? オレを手放すってのか!? 戻ってこなかったらどうする気なんだ!?」

理緒「大丈夫。力也は自分で思っているよりもずっと賢いよ。ちゃんと自分でこちら側に戻ってこれるって」

力也「本当か? お前の言うことだもんな。信じていいんだよな?」

理緒「もちろん。僕を信じて」

あすか「爽やかな笑顔で、なかなかに酷いこと言ってないか? 理緒」

力也「オーケイ。親友にそこまで言ってもらったんだ。オレは行ってくるぜ。自分の賢さって奴を信じて、な」

あすか「こいつはこいつで聞いてないな……」

フィアリス「いまのが手本じゃ。ほれ、こんな感じで小粋なギャグトークを繰り広げてみい、功一よ」

功一「わ、わかったよ。……ええと、力也さん?」

力也「おう! ボケなら任せときな! あと『さん』はいらねえよ」

功一「でも、僕より年上みたいだし……」

力也「年上? いくつだよ、お前。オレは本編開始時において十八だが」

功一「うそ、僕と同じ……? いや、きみのほうがひとつ下、になるのかな……?」

力也「そうなのか? なら、なおさら『さん』はいらねえじゃねえか」

功一「う〜ん、でも僕より年上っぽく見えるから……」

力也「そうか? まあ、無理にとはいわねえけどよ」

功一「…………」

力也「あれ? まさかとは思うが、いまので会話終了か? 冗談キツいぜ、功一さんよお」

功一「ごっ、ごめんなさいごめんなさい!!」

力也「いや、そんな必死に謝られても……。……ああもう! 調子狂うぜ! 理緒だったら『そんなわけないじゃない』って続けてくれんのによおっ!!」

功一「えっ……、あそこから話題を展開させるとか、できるものなの?」

力也「ったりめえだろ。……いいか、お前には足りないものが全部で一〇八つある」

功一「多いね……」

力也「…………」

功一「…………」

力也「……マジで、それだけなのか?」

功一「え? それだけって、なにが?」 

力也「ツッコミだよ! 突っ込んでくれよ!! 『煩悩の数と同じだね』とか、『テニスじゃないんだから』とか、『具体的に挙げてみろ、ぼけっ!』とか、色々あんだろ!!」

功一「ご、ごめんなさい……」

力也「謝んなよ! 謝られると、そこで話が終わっちまうんだよ!!」

功一「そ、そっか……。ごめ……あ」

友美「やれやれですね〜。藤島さんにはツッコミスキルがないですから〜」

力也「おっ! じゃあ、お前にはあるんだな!」

友美「あるに決まってるじゃありませんか〜。まあ、主に毒舌方面ですけど〜」

力也「それでもスキルがねえよりはマシだ! よし、じゃあいくぞ! いいか、お前には足りないものが全部で一〇八つある」

友美「さっきと同じことを言ってますね〜」

力也「そっちにツッコミくんのかよ。それはそれでやりにくいな……。まあいい、ひとつ目は声の大きさ。二つ目はテンションの高さ。そして三つ目は……大きな身体だ! 頼もしさだ!!」

友美「どれもいりませんよ〜、頭の中スカスカの筋肉だるまさん〜」

力也「ぐはぁっ!? オレのヒットポイントに大ダメージぃぃぃぃぃぃっ!?」

あすか「力尽きたな、力也」

理緒「なんて、惨(むご)い……。……って、いやいやいやいや! 貴重なボケ役を再起不能に追い込んじゃダメでしょ、友美さん! ツッコミは適度に! 笑って流せるくらいのものを! これ、基本だよ!?」

友美「そんな手加減の仕方、私にはわかりませんよ〜。周囲にボケキャラがいなかったんですから〜」

理緒「……なるほど」

力也「そこで納得すんのかよ、理緒っ!? オレ、こう見えても勉強はできるんだぜ!? それはお前だって知ってるだろ!?」

理緒「その割には、いつも僕の宿題を写そうとするよね。ちゃんと自分でやらないと実にならないって言ってるのに」

力也「これこれ! このソフトなツッコミがいいんだ!」

友美「私にはパンチが弱すぎるとしか思えません〜」

理緒「友美さんのはパンチが効きすぎてるんだよ……。まあ、いまのは僕もツッコミのつもりで言ったんじゃなかったんだけどさ」

力也「ぶっちゃけ、軽口の叩きあいができねえんだよな、功一とだと。……あ、言っとくけどお前ら旧メンバー自体、軽口の叩きあいができてねえからな? 初対面とか、全然関係ねえぞ?」

功一「そうなんだ……」

恵理「でも、功一さんに軽口を叩くなんて、私にはできませんよ……」

友美「私も、恵理ちゃんに言葉の刃を向けるのは、ちょっと〜」

梢「その『言葉の刃』を向けるのはやめましょうよ。……それに、わたしだって理緒さんに軽口は叩けませんよ?」

理緒「言われてみれば、確かに。一体、なにが違うんだろう」

美花「三点リーダーの多さ?」

フィアリス「気安さ、かの?」

黒江「キャラ性は、これといって変わらないはずなのだがね」

力也「というわけで、だ。理緒、梢にちょっと軽口叩け」

理緒「流れからして、断るってことはできそうにないね。……わかったよ」

梢「理緒さんは諦めが早いというか、なんというか……」

理緒「とりあえず、さっきの功一さんのセリフをトレースしてみるね。なにが違うのか、それではっきりするはずだ。……あ、力也たちはなにがあっても会話に参加してこないように」

力也「ラジャ」

あすか「らじゃ」

梢「ラジャ、です」

理緒「いや、梢ちゃんは会話に参加してもらわないと困る」

梢「あ、ごめんなさい。……じゃあ、どうぞ」

功一「……なんか、早くも僕たちとの違いが出てきてない?」

恵理「ぎこちなさが薄いですよね。私たちは、もっと……こう、なにを話すにしても緊張してしまうのに……」

理緒「……こほん。隣の家に囲いができた。かっこい〜」

梢「……ふと思ったんですけど、格好いい囲いって、一体どんな囲いなんでしょうね?」

理緒「いや、昔からある古典にそんなツッコミを入れられても……。でも、言われてみれば確かに……。……う〜ん、スプレーで格好いい落書きでもされてるのかな」

梢「それは格好いいよりも迷惑な感情のほうが先に立ちますよ、理緒さん」

理緒「妙に現実的な意見だね……」

梢「大家なんてやっていると、そういうのには敏感になってしまって……。すみません、せっかく考えてくださったのに」

理緒「それは別にいいんだけどね。でも、あんな古典的なギャグから、こんな方向に話が転がるなんて、誰が予想しえただろうか……」

梢「言われてみればそうですね。これはなかなかに不思議です。……あ、彩桜学園の七不思議に申請してみましょうか?」

理緒「こんなどうでもいいことを申請するんだ……」

梢「あそこはそういうところですから。……それで、どうします?」

理緒「えっ!? 僕が暗に込めておいた拒否のニュアンス、伝わってない!?」

梢「そんなものが込めてあったんですか……。すみません、気がつかなくて……」

理緒「いや、謝られることじゃないけどさ。というか、謝ったら最後だって力也も言ってたし。……っと、力也の名前を出すのはルール違反かな? このあたりでやめとく?」

梢「そうですね。……それで、一体どこが違ってたんでしょうね? わたしたちと恵理さんたち」

理緒「二人とも、キャラ性は、同じはずなんだけどね。関係性だってそうだし」

美花「あー……、ぶっちゃけ、梢ちゃんはノリがいいよね」

力也「つーか、二人ともボケにボケで返す傾向あんだろ。自覚してねえのかもしんねえけどよ」

功一「うん。なんか、色々違った」

恵理「私たちの上位互換って感じですよね……」

梢「そうでしょうか?」

理緒「まあ、それで納得してくれるのなら別にいいんだけど」

あすか「上位互換であることは認めたな」

功一「同じ『ヒロインの友情ポジション』でも、ああいうツッコミは友美ちゃんにはできないよね?」

友美「ケンカを売ってるんですか〜? 藤島さん〜?」

功一「ひえぇっ! ごめんなさいっ!」

理緒「思ったんだけどさ、そこは『買ってくれるの?』って返すくらいでちょうどいいんじゃない?」

功一「できないよ、そんなこと!」

友美「ヘタレですからね〜、藤島さんは〜。そして理緒さんは見た目の割に命知らずですね〜」

理緒「そんなことないよ。仮に怒らせちゃうとしても、そうやってぶつかり合うことで友情っていうのは育まれていくんだから」

力也「理緒、いいこと言った! やっぱり拳と拳で語り合わなきゃな!」

理緒「いや、別に暴力を推奨してはいないからさ。そもそも、僕と力也ってケンカしたことあったっけ?」

力也「言われてみれば、半年くらい一緒にいるのに、ガチなケンカは一度もしたことがないような……?」

あすか「あたしと力也はしょっちゅうケンカするのにな」

理緒「え? あれってケンカなの?」

力也「あすかが一方的に蹴ってきてるだけだよな」

友美「……なるほど〜。私が得意とするのは言葉の暴力。あすかさんが得意とするのは直接的な暴力。そこに違いがあったのですね〜」

功一「そもそも、理緒くんは僕よりもかなり肝が据わってる感じがする。言葉の端々(はしばし)からそんな印象を受けるんだよ」

力也「あー……、それは無理ねえんじゃねえか? ほら、オレたちは元々『ユメの箱庭』の登場人物なわけで……」

あすか「そっちの世界では、スペリオル聖教会からの依頼で色々と動き回ってるからな。そのキャラ設定をそのままこっちに持ってきてるんだから、多少は肝も据わってる」

理緒「言っておくけど、僕はこれでも気弱なほうに入るんだからね?」

友美「それはわかりますよ〜。比較対象が藤島さんだから、肝が据わってるように見えるんです〜」

功一「友美ちゃん……、いまの、僕にかなりのダメージが……」

友美「そんなの、知ったことじゃないですよ〜」

力也「なあ、オレはバカだから間違ったこと言っちまうかもしんねえけどよ。お前ら旧メンバーは微妙にギクシャクっつーか、ギスギスしてねえか? 三角関係入ってるっつの?」

友美「私は恵理ちゃんが大好きですからね〜」

あすか「あたしだって梢のことが大好きだ!」

理緒「なにを張り合ってるのさ……」

あすか「でも、梢と理緒がつきあうなら祝福するぞ? もちろん、ちょっぴり寂しくもあるけど、それ以上に嬉しいからな」

理緒「いきなりなにを言いだしてるのさ!」

あすか「仮定の話だ」

理緒「それでも唐突すぎるよ!」

あすか「唐突だったか?」

力也「いや、オレにはそこまで唐突には感じられなかったが……」

理緒「うわあ、こういうときだけあすかとタッグを組むんだね、力也。見損なったよ……」

力也「え? …………。待て! なんでそうなる! なあ、その蔑むような目をやめてくれよ! 親友だろ、オレたち!」

あすか「相変わらず力也は、理緒に冷たくされると弱いな……。――それで、お前のほうはどうなんだ?」

友美「私ですか〜? もちろん、大反対ですよ〜。藤島さんのようなヘタレ、恵理ちゃんには相応しくないです〜。……まあ、それでも恵理ちゃんが幸せになれるっていうのなら、形だけの祝福はしますけど〜」

理緒「本当だ。このあたりの関係性が違いすぎる……。力也の言ったとおりだったね」

力也「だろ!? いや、オレも当たってるかどうかは自信なかったけどよ」

友美「わかりました〜。メンバーチェンジの件、渋々ながら受け入れるとしましょう〜。まあ、これで恵理ちゃんが藤島さんのものにならないで済むと思えば〜」

功一「友美ちゃん、実は僕のこと、すっごく嫌いだったんだね……」

友美「いえいえ〜、単純に、恋敵として敵視していただけですよ〜。藤島さんだからどうこうというわけではないです〜。……それで、リメイク版『在りし日の思い出』って、登場人物以外は、具体的にどんなところが変わるんですか〜?」

黒江「これといった大きな変更はないな」

フィアリス「そうじゃな。物語の骨子はそのまま。功一……もとい、理緒が『幸福になること』を拒絶するのはなぜか、恵理……ではないの、梢が見る夢の意味、そして二人の過去。それから『彩桜学園』の『暗部』とはなんなのか。そのあたりを描くという点はなにも変わらん。わしや黒江の存在意義も、な」

美花「私の存在意義は?」

フィアリス「ぶっちゃけ、お主の存在意義は『ファミレス『満員御礼』』や『永遠の証明』への橋渡し役、というだけじゃからなあ。『在りし日の思い出』でやることなど、これといって特には……」

美花「酷っ!」

黒江「変わるのは、功一くんが部外者だったのに対して、理緒くんは彩桜学園高等部の三年生――学園内部の人間であるとか、三人称だった地の文が一人称になるとか、そういう細かいところだけだ」

友美「『まほらば〜在りし日の思い出〜』から『彩桜学園物語〜在りし日の思い出〜』にリメイクしようとしたときに比べれば、どれも確かに細かい変更ですね〜」

功一「学園の『暗部』とか、フィアリスの存在とかは、『まほらば』の二次創作の段階では影も形もなかったからね」

恵理「ところで、作者さんが『Kanon』の影響を受けて『まほらば〜在りし日の思い出〜』を執筆したのは、いまから十一年以上も前。2002年の1月のことなんでしたっけ?」

フィアリス「そうじゃな。そして『彩桜学園物語』として生まれ変わらせようと、『彩桜』版の第一話を『館』に載せたのが2007年の年末」

黒江「で、今回『リトルバスターズ!』というゲームに影響を受けて、『在りし日の思い出』の再リメイクを決定、と。影響を受けたゲームが、それぞれ同じ会社のものであるというところが、なんとも因果だな。変更及び追加されたキャラも、ほとんどが『リトルバスターズ!』のキャラとよく似てしまっているし」

詩織「あ、でも私たち『第一演劇部の三人娘』はそのまま続投です」

友美「訊いてないですよ〜」

詩織「――ひっ!」

功一「ああもう、余計なことを言うから……」

恵理「友美ちゃん、抑えて抑えて〜」

友美「……恵理ちゃんが言うのなら〜」

詩織「こ、怖かった……」

功一「――ともあれ、それじゃあ」

理緒「うん。ここからは、僕たちが」

恵理「片山荘を、『在りし日の思い出』をよろしくね、梢さん。……ううん、梢ちゃん」

梢「はい。精一杯、頑張ります」

あすか「よし、丸く収まったところで、『在りし日の思い出』よりも前――理緒が初めて片山荘にやってきたときのエピソードへのリンクを張るとしよう。その名も、『在りし日の思い出 前日譚』だ! ――それっ! 『小説家になろう』 ……これでよし、と」

力也「……って、こらこらこらこら! 『なろう』のトップページにリンクを張ってどうする! タイトル名を検索して読めってか!? いいか、リンクってのはなあ、こうやって張るんだよ! 『在りし日の思い出 前日譚』 ……どうだ!」

理緒「やっぱり、なんだかんだで力也のほうが頭いいよね」

力也「そりゃ、高等部の三年と一年だからな。これでオレのほうが頭悪かったら泣けるだろ」

あすか「まあ、ちゃんと飛べるのかは怪しいところだけどな」

力也「飛べるに決まってんだろ!」

理緒「ええと、じゃあそろそろ時間もおしてきてるし……」

梢「お開き、でしょうか?」

美花「そうだね。じゃあ最後に、これで最後の登場となるであろう三人から、それぞれメッセージを」

功一「無難な言葉になっちゃうけど……これまで、ありがとうございました」

友美「三年ぶりに座談会に呼ばれて来てみればこれなので〜、正直、納得いかない感はバリバリですけど〜」

恵理「これからは、リメイク版の『在りし日の思い出』のほうをよろしくお願いします。……あ、ブログやツイッターでは『在りし日の思い出R(リメイク)』と呼ばれるそうですよ?」

功一「それと、僕たちの物語は一応、『館』にそのまま置いておくようだけど、それは果たしていいことなのか悪いことなのか……」

恵理「いいんじゃないでしょうか。私たちの物語が確かにあった、ということなんですから」

功一「……そっか。うん、そうなのかもしれない」

友美「それでは〜」

恵理「せ〜の、で」

功一「うん。……せ〜の」

三人『――いつか、またどこかで!』



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